大場莞爾〜日常風景から感じる「中国らしさ」とは〜

カルチャーを知る

「中国らしさ」とは何か、いずれは偏見を取っ払って考えたい。

物事を見た目で判断するのは、あまり好ましくないことである。例えば人間を評価する時、外見からの印象と実際の性格が違うことは珍しくないだろう。形や色が悪い野菜だって、いざ食べてみると案外美味しいなんてこともある。歴史を振り返っても、見た目による差別や偏見は数多くの悲しみを生んできた。見た目だけの判断なんて、言ってしまえば全く信用ならないものである。
とはいえ、ぱっと見の印象は我々にとって重要な直感の一つである。そんなことを南京研修にて私は感じた。中国で得た視覚情報-街の風景や人々の様子は、それだけで「中国に来た!」と私に実感させるものであった。この頭の働きには「見た感じ」と「中国らしさ」がリンクする、何かしらの判断が介在していたに違いない。ここ近年、お国柄と外見をセットと見なすことはあまり褒められた行為ではないが、実際感じてしまったのだから仕方ない。
ここでは、私が「中国らしさ」を感じた風景をいろいろとピックアップしている。なぜ私は、これら目に入ったものから「中国」を見出したのか、この文章を書きながら整理してみたいと思う。

1 飲食店内で見かけた漢詩


南京大学近くの「四川宜宾燃面」では、メニューの隣にこんな漢詩が掲げてあった。唐代の有名な漢詩であるらしく、「農家は苦労して食べ物作ってんだ」的ニュアンスの漢詩であるようだ[1]。意味は素晴らしいが、なぜ漢詩を飾るのか。日本では、こういう粋なことをするのは面白い居酒屋ぐらいだと思う。

2 独特な色使い


中国において、スローガンやモットーの類は赤色の下地に黄色で文字が書かれることが多い。日本人にとっては「THE 中国」とも言える色の組合せだろう。実際に南京の街を歩けば至る所で目にする配色である。共産党に関係するものなのか、それとも伝統的な感性に起因するものなのか大変気になる。

ピンク色のドラゴン。とてもキュートだが、日本的な色使いではないことは確かだ。

こちらの広告もピンク色。別に違和感はないが、珍しい気がする。

カフェの壁面が青色。食欲減退の色である。たった1軒の話ではあるが、日本では海の家でさえ青色を使わないので印象的であった。

3 注意書き


ホテルにて見かけた「館内禁煙」を知らせる掲示。日本語にすると「肺をちょっとでもキレイにしようぜ」と訳せようか。ただ禁煙を知らせるのではなく、人間の感性に訴えかけてくる点が面白い。(廊下でおじさんがガッツリたばこ吸ってました)

4 コンビニ弁当


日本のお弁当や冷凍食品は、絶対にこのようなパッケージを採用しないと思う。中国のセブンイレブンで撮影したものだが、絵や文字がデカい。フォントもよく見る行書系と丸ゴシック系であり、良くも悪くも豪快なデザインである。

5 高層ビル


高層建築など、世界のどこでも見られるものだ。しかしながら、中国の高層ビルは日本や東南アジア、欧米のそれとは何かが異なる。少し韓国と似ている気がするが、何をもって類似点・相違点を導いているのか自分でも全く分からない。強いて言えば、外壁の少しくすんだ色味だろうか。

日本でもそれぞれの街が個性を持つように、中国の街も日本をはじめとしたアジア諸国の街とは違った風景を持つ。写真を一目見ただけで「この写真は中国の街だ」「日本のあそこだ」「インドネシアだ」…と判断できるのは、私だけでなく皆さまもだろう。全く不思議なものである。

最後に
色々と中国らしい光景を並びたててみた。しかし、よくよく考えると「中国らしさ」を見出す根拠などなく、まったくの主観である。とはいえ、私同様に「あ、これは中国っぽいよね~」と思う方がいれば、共通認識として何か「中国」を感じ取る要素が含まれているのだろう。自分もここが掴めないので、誰か教えて欲しい。

[1]ウィクショナリー「粒粒辛苦」

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平柳 智明