メンバーインタビュー〈倾盖如故〉:イーチェンさん

人を知る

『茶話日和』の活動には、各国からの留学生や、東アジアの言語を学ぶ日本人学生を含め、多彩なバックグラウンドを持ったメンバーが参加しています。「盖如故」は、そんなメンバーについて皆さんに知ってもらうためにメンバー同士がお互いにインタビューするという企画です。

 

今回は王儀倩(ワン・イーチェン)さんにお話を聞きました。

 

(インタビュアー・執筆者:妙手回春

 

——こんにちは!まずは大学と学年を教えてください。

 今は東京大学の文学部3年生で、心理学を専攻しています。

 

——出身はどこですか?

 私の出身地は中国河南省の南陽市です。河南省は中国の中で一番人口が多い省であり、南陽市はその中で一番人口の多い町です。つまり、一番人口が多い国の一番人口が多い省の一番人口が多い町という意味で、確率的に一番起こりやすい場所で生まれ育ちました(笑)。私の故郷は主に農業を中心とした産業構造の場所です。小さい頃はよく田んぼや畑が広がる場所にいて、羊と一緒に遊び、畑のすぐそばで収穫物を焼いて食べるということもありました。私の故郷では、収穫物のうち商品にはならないようなものを自由に皆でシェアして食べていたのです。また、私は一人っ子なのでいとこと非常に仲が良かったです。

 

——専攻として心理学を選んだのはなぜですか?

 私の専門は人間の認知機能について調べる実験心理学です。人間の記憶や知覚のメカニズムを解明することが目標です。私がこの認知心理学に興味を持ったきっかけは、もっと小さなころに感じた、発達障害がない普通の子供、あるいは勉強量には差がない子供たちの集団において、どうして成績の違いが生じるのかという疑問でした。もしかしたら記憶の能力や認知の機能などには個人差があるのではないか、場合によっては心理学の知識を応用して、子供の学習や成績向上に役立つ知見が得られるのではないかと考えたのです。もちろん子供の頃は実験心理学というものを知らなかったですが、その時の疑問が今の進路選択につながっていると思います。今は3年生ですから、専門の授業も本格的に始まって、実験室に行って実際の実験を学んでいます。

 

——心理学に限らず、印象に残っている授業などはありますか?

駒場の前期教養学部時代に履修した小松美彦先生の倫理学に関する授業です。その授業では尊厳死や安楽死などの倫理学的問題、死生学的な問題について勉強しました。その授業で特に印象的だったのは、先生がおっしゃった事に対して批判的に考えるということでした。物事の前提について常に疑うべし、という言葉が自分の心に強く響きました。

 

——趣味についてお聞きしてもよろしいでしょうか?

 私は音楽が好きで、特にカラオケに行けば6時間でも歌えるような人間です(笑)。一番好きな日本の歌手は椎名林檎さんで、中国で高校に通っているときから夢中で聞いていました。彼女の歌は基本的にすべて歌うことができました。また、初音ミクのようなボーカロイドにも関心があります。RADWIMPSも高校時代から大好きで、是非日本に行った後はコンサートなどに行きたいと思っていました。

 

——そうなんですね、日本に留学しようと思った理由もそのような関心が大きな理由でしょうか?

 日本の歌に興味があったのはもちろんですが、お茶などの伝統的な文化を含めて、日本の文化全般に興味があったことが一番大きいと思います。それらをぜひ体験したいと思いました。また、日本では他人への思いやりをとても大切にしている印象があり、自分の主張が他人を傷つけないように言葉選びをしている点が自分の考え方、自分の大切にしていることとリンクしていると思いました。特に日本の敬語は本当に好きです。日本の敬語はとても複雑で、それを使うことによって自分の謙虚さや他人への尊敬を表すことができる点が素晴らしいと思います。日本語で暮らせることが幸せです。

 

——日本語はどのように勉強したのでしょうか?

 私の故郷は地方なので日本語を学ぶ環境はあまりありませんでした。そこで高校卒業後はまず天津に行って、そこで短期間ながらも本格的に日本語を学びました。そこには日本舞踊のサークルや茶道のサークルがあって、日本人の交換留学生と仲良くなったことも影響が大きかったと思います。ちなみにそこでは先輩に教わりながら、着物の着方も習いました。日本に来てからは一度も着物を着る機会がないですけど(笑)

中国で参加していた茶道サークルの写真

 

——好きな日本の言葉はありますか?

「縁」という言葉が好きです。特定の人と出会うことは確率的に低いですから、そのような縁は大切にしたいと思います。

 

——小学生の頃に将来の夢はありましたか?

 弁護士になりたかったです。家族と一緒に法律を扱ったテレビ番組を見ていたので、自分も弁護士さんになりたいなと思いました。ただ、高校生になって考えが変わり、文理選択では理系を選びました。

 

——なぜ「茶話日和」の活動に参加しようと思ったのでしょうか?

 直接のきっかけは友人に誘われたことです。自分も日中の交流に貢献したいと思い参加しました。一人一人の中国人の姿をもっと日本に住んでいる方に知ってもらえればいいと思いました。文化の差よりも個人の差の方がはるかに大きいですから、国籍ではなく個人の生活に焦点を当てるのはとても良いことだと思います。

 

——将来の目標や展望について教えてください

 今はまだはっきり決まっていませんが、もし自分に適性があれば心理学の研究者になりたいと思います。さしあたって、大学院への進学を考えています。可能ならば日本で長く生活したいと思っているので、卒業後も日本で暮らすつもりです。また、中国に戻ることがあれば、中国に住んでいる人に日本での経験や文化を伝えるような活動ができればと思います。

——ありがとうございました!

 

写真は本人による提供

妙手回春