『茶話日和』の活動には、各国からの留学生や、東アジアの言語を学ぶ日本人学生を含め、多彩なバックグラウンドを持ったメンバーが参加しています。「倾盖如故」は、そんなメンバーについて皆さんに知ってもらうためにメンバー同士がお互いにインタビューするという企画です。
今回は馮建晴(Feng Jianqing、ニックネーム:ハル)さんにお話を聞きました。
(インタビュアー・執筆者:Steve)
——こんにちは!まずは大学と学年を教えてください。
東京大学の工学研究科で機械工学を学んでいます。現在修士1年生です。
——出身はどこですか?
中国の広東省にある佛山市という街の出身です。美味しい食べ物がいっぱいあることと、ブルースリーの出身地であることが有名です!
——専攻として機械工学を選んだのはなぜですか?
日本に来る前は中国の天津の大学に通っていたのですが、そこには東大の教養学部にあたるものがなかったので、大学入学時に専攻を選ばないといけなかったんですね。それで機械工学を選んだのは、将来性がありそうだと考えたからです。機械工学は大変で、高校のように授業が多かったです。
——なぜ日本に来たのですか?
長い話になります(笑)高校一年生のときバンドの部活に参加していたのですが、AKB48が好きな先輩の影響で自分もAKB48が好きになりました。ギターでAKB48の歌を演奏することもあり、だんだん日本が好きになりました。AKB48の曲や番組を聴いているうちにだんだん何を言っているのかわかるようにもなりました。大学3年生のとき興味は宝塚歌劇団に移りました。特にちょっと前の天海祐希さんなどの時代が好きで、帝国劇場のエリザベートで主人公を演じた花總まりさんが大好きでした。宝塚は女性が娘役と男役に分かれている点が特別だと感じました。AKB48は6年間、宝塚は3年間好きで、今は韓国のBLACKPINKが好きです(笑)AKB48や宝塚は日本語の学習にも役立ちました。1日に何回も聞いているうちに字幕がいらなくなりました。寝るときも流していて、1日12時間聞いているときもありました。なので日本語は全て独学でしたね。
——バンドではずっとギターをやっていたのですか?
最初はギター、それからベースやドラム、ボーカルなども触れました。YUIの「グッバイデイズ」や「again」(鋼の錬金術師のOP曲)なども弾きましたね。
——すでにいろいろ聞いてしまったところもあるのですが、改めて趣味を聞いてもよいですか?
趣味はいっぱいあります。音楽、絵、運動などですね。ジムにも行っています。あとはビデオの編集もちゃんと学んだわけではないですが自分でやっています。趣味が多いので時間は溶けますが、ストレスを解消してリラックスできます。大学ではハーモニカのサークルやギターサークルにも参加していて、あとは工学部の学生会(※中国では日本の高校の生徒会のようなものが各学部・大学にある)にも入っていました。
——絵も描かれているんですか!もしよければ見せていただいても…?
これはBLACKPINK(韓国の女性アイドルグループ)の絵です。
——クオリティーが高すぎます…音楽に絵に運動にと多才なハルさんですが、それらの趣味の中で特に自分に影響が大きかったものはどれですか?
音楽です。音楽はやはり一番リラックスできる手段ですね。以前ストレスがたまって発散する方法が見つからなかった時期もあったのですが、そのときもギターを弾いていないからストレスが大きかったのだと気づきました。
——自分もギターを始めようと思ったことがあるのですが、難しくて1年も経たず諦めてしまいました…でも実は自分もチェロをやっています。
チェロ、一番やってみたい楽器です!ギターを諦める原因は多くの場合手が痛いことや、毎日練習しないと上手くならないことだと思います。自分は毎日時間があったらギターを弾いていました。家族はギターをうるさいと思っていたみたいです(笑)でも好きなことをやるのは十分良いことだと思います。まずは始めて見ること、それから努力を続けることが大事だと思います。
——なるほど、人生哲学ですね…
友達をよく洗脳しちゃいます、自分には人を洗脳する能力があるのかもしれません(笑)
——日本に来る前と後で日本に対する印象の変化はありましたか?
そうですね…そんなにないですね。印象に変化が生じるのは何か得るものを期待しているからだと思います。日本には何かを得ることを目的として来たのではなく、新しい体験をするために日本に来ました。得られる結果より過程の方がもっと重要なので、比較したりする必要はないと思います。目標というのは何を達成するかではなく、その過程で何を体験するかだと思います。たとえば、大学受験でも大学に入ること自体ではなくてその過程で努力することが重要ですよね。なぜそれを始めたのかという初心を忘れずに努力する過程が大事だと思います。中国語の「保持初心(初心忘れるべからず)」という言葉の通りですね。
——そういう考え方を形成するまでどのような子供でしたか?
小さい頃は歌手になりたかったです。今も趣味として音楽が好きです。
人生についての考え方は日本に来てから形成されました。日本で困難に遭遇し心理状態が変化し、うつ病になる留学生もいます。知らない言語に知らない人ばかりで友達作りが怖くなる人も多いです。
自分は心を込めて接してくれる人には自分も心を込めて接します。語学学校の70〜80代の先生とも仲良くなりました。自分は人は一冊の本のようなものだと思っています(每一个人都是一本书)。一人一人が本なので、人を知ること=本を読むことです。人には話す人と人の話を聞く人との2種類いると思いますが、自分は普段は人の話を聞く人だと思っています。ただ、話をたくさん聞いているからこそこうした場で沢山話せるのだと思います。中国語に「取其精华,去其糟粕(物事の優れた部分を取り入れ不要な部分を捨てる)」という言葉があります。この言葉の通り、自分で判断しながら良いところは吸収して、要らない部分は捨てるのが良いと思います。
高校時代は人生はバスのようなものだと思っていました。バスは違う人が乗っては降りますが、終点まで一緒に乗る人もいますよね。人生も同じだと思います。
——なるほど、深いですね…ところでなぜこの活動に参加しようと思ったのですか?
さっき言った通り、一人一人が一冊の本だからですね。この活動に参加することで多くの人に触れ、多くのことを知れると思いました。
——将来の目標はありますか?
明確な目標はありませんが、すごい人になりたいです。具体的にどの方面ですごい人になりたいというのは決まっていないです。以前は将来どうしようか焦っていましたが、それを乗り越えて今を生きればいいと思うようになりました。
——日本で学んだことはどんなことですか?
日本では多くのことを学びました。専攻の内容だけじゃなくて人との交流においても多くを学びました。どう人生を生きるか学ぶことも大事だと思います。
——もし日本を一言で表すと?
一言じゃ少なすぎます(笑)でも強いていうなら「最初の夢を忘れない」ですね。
——ありがとうございました!
*写真は全てハルさん提供