2023年2月28日、釜山を訪れた私たちは、釜山韓日親善協会の方にインタビューする機会を得ました。そんな釜山韓日親善協会のメンバーからお二人にインタビューさせていただき、協会での活動内容や、日本語学習、今後の日韓の展望を伺いました。
取材相手:親善協会から ソジンハンさん、ユンジョムスさん
釜山韓日親善協会に関して
蟹江:お二人とも親善協会の会員ですが、親善協会とはどのような団体でしょうか。
ソさん:
釜山にはいくつかの日本との交流をしている団体がありますが、その中でも、親善協会は一番歴史が長い団体です。元々は釜山商工会議というところの傘下機関でした。今は政治とか経済とは関係のない全くの民間団体になっています。
昨年12月の方には釜山で札幌と福岡の日韓親善協会のメンバーの方々が釜山にこられて一緒に忘年会をやりましたし、2月には福岡の日韓親善協会に行きました。
民間団体なので自分の知り合いとかに紹介されて活動に参加しよう!となる方がほとんどです。親善協会に入ろうという勧誘の活動は特にないです。知り合いで日本に関心のある人を誘ったり自分の意思で探してきて入ったりする方が多いと思います。
蟹江:韓日親善協会に入って何が良かったことやこれまでの活動を教えてください。
ユンさん:
私の場合は、釜山韓日親善協会の前に、釜山韓日文化交流会という団体でも、5年くらい活動をしていました。そこでは、日本語能力試験への対策とか、少し堅い雰囲気でした。ここの団体は、まるで国際市場のような雰囲気。活気があって、堅苦しくない。それが、良い点だと思います。
ソさん:
親善協会はですね、主な活動は、長崎、山口、福岡、札幌、広島、島根と中心になって交流しています。今年の二月には、福岡の大きなホテルで、新年会をしました。
日本側の場合は、出席メンバーが結構派手ですね。というのは、前の政調会長とか、文部科学大臣とか、衆議院とか、福岡県の議員とかが結構出席されて。あとは福岡で韓国との事業をやられている方とか。しかし韓国側の会員さんは、日本のことが好きで、ボランティアみたいな感じで活動しています。韓日親善協会の会長さんの悩みの一つは、日本の場合には、会員さんに企業が多いことです。企業が入っている。例えば、福岡県の日韓親善協会の会長さんはJR九州の人。半官半民のような雰囲気になっています。こちら側は、全くの民間団体。
日本語学習について
ソさん:
日本語を学習する学生の数を見てみると、日本への関心は、10年くらい前には、非常にアツかったといえます。しかし最近だと、韓国と日本の政治的な関係の悪化や、人口減少も相まって、日本語学習者はだんだん少なくなってきています。
ですが、日本は非常に近い国なので、日本に関心のある学生さんが、釜山、韓国には意外と多いです。この学生さん(連れてきた教え子の方)も、日本に一年間ホテルでワーキングホリデーに行っていて。僕の家族も冬休みに大阪へ行ったりも。うちの学生さんも、やっとコロナが落ち着いて、日本に行く学生さんがすごく多いです。その反応としては「日本が非常に良い」、と。もちろん今はちょっと円安で、それから(コロナで入国を厳しく制限していた他の国に比べると)行きやすいこともあります。日本は綺麗だし、親切だし、食べ物も美味しいし、私からみたら近いし、簡単にいける外国ということでメリットがあると思います。実際、新聞によると、先月(*2023年1月)日本を訪問した外国人が150万人、その中で韓国人が56万人でした。
ユンさん:
今の若い人たちは、私たちの時代よりも日本語への関心がそれほど高くないのではないかと感じています。私たちの時代は漢字とか、日本文化とかがより身近な時代なので、それのために、日本語を勉強する人が多かったです。今は、アニメなど、自分が、日本に対して関心がある人たちだけが日本語を勉強しているのではないかと私は個人的に考えています。
蟹江:昔は、国同士のつながりのために日本に興味を持つ人が多かったけれど、今は個人的な興味を持つ人が多いということですね。
ユンさん:
だから、日本語の学院(塾)とかに行かなくても、私の会社の若い人なんかも、アニメだけをみながら、自分1人で日本語を勉強して喋れるようになっているのをみて、「ああ〜」と思いました。文法などは違うこともあるのですが、昔とは学習の仕方に差があるように思います。
蟹江:確かに、釜山大学の皆さんも日本に興味を持ったきっかけにアニメをあげてくれますね。
ソさん:
特に、僕の娘も釜山大学の四年生なのですが、デザインを勉強しています。日本学科というもののメリットや人気はあまりないです。日本語も英語も勉強しながら、というように勉強するのがよくあることで、ユン先生も私も、親の立場で、外国語を勧めるのだったら、とにかく英語なわけですよね。
しかし、私も学生さんに日本語の授業をしているのですが、日本語が輝くためには、そのそれを支えてくれる英語の力があってこそだと思います。英語ができ、そして日本語ができるということが理想的だと思います。
日本語学科というのは、ほとんどなくなりました。しかし第二外国語として、日本のアニメ漫画などに興味があって、勉強する学生さんは非常に多いです。日本語オンリーという学生さんは、あまりいないと思います。
というのは、昔は、特に釜山の場合は、日本に一番近いし、日本と観光とか旅行とかビジネスとか、交流が活発にあったので、日本語だけできたとしても、就職に非常に有利だということがありました。でも、今は日本語だけができたとしても、じゃあTOEICは何点ですか、となってしまう。娘もデザインを勉強していますが、デザインという分野も日本が先に進んでいますので、それに関心があって日本語を勉強するという感じです。
個人的なことに関して
蟹江:お仕事は何をされていますか。
ソさん:
私は学校で日本語の先生をしています。
ユンさん:
輸出入コンテナを含む物流会社の取締役です。ボランティアで、韓国語を教えています。
蟹江:どのようなきっかけで日本語の勉強を始められたのでしょうか。
ユンさん:
今は外国語としての韓国語教育博士修了をした状態ですが、個人的な事情で二十歳の時に、大学に行くことができなくて、高校を卒業して、働いていました。そこで使っていた色を染める繊維のマシンが日本製でした。その時は日本語が全然わからない。ひらがなも文法も全然わからない。でも、マニュアルが日本語だから、自分でそれを見ながら勉強しなければいけなかったです。
蟹江:マニュアルは日本語でしか書いていなかったのですか?
ユンさん:
そうそう。日本語でしか書いてない。先輩も課長も知らないふりをしました。切迫していたので自分で勉強するほかなかった。自分で勉強しながら、マニュアル一冊を読みました。それで、今は自分で日本語を読めるようになりました。
蟹江:すごいですね。実際どうやって勉強されたのですか。
ユンさん:
漢字辞典とか、辞書とかを見ながらやりました。私たちは勉強するとき漢字がいっぱいだけど、基本的なものは、日本語と韓国語と同じということがわかりました。この漢字はこの字だなと想像がついた。今は若者や既成世代もあまり漢字を使いませんが。切実に探してみたら通じたようです。
ソさん:
若い学生さんが、日本語が難しいと感じることには、我々は、子供の頃から漢字を勉強していましたが、最近はあまり漢字の勉強をやらなくなったことがあると思います。今の若い世代は、漢字教育をあまり受けていないですね。
蟹江:おふたりくらいの世代の方は、漢字に結構なじみがあるけれど、おふたりのお子さんくらいの世代になると、漢字自体に馴染みがあまりないのですね。
蟹江:最後に、釜山はどのような場所だとお考えですか。
ユンさん:
釜山は、韓国の、心のキャピタルです。なぜかというと、朝鮮戦争の時に、最後まで残った都市だからです。韓国の人たちは、釜山の心は特別だと考えています。そこは、地球のマグマのような、アツい場所だと。なぜかというと、そこから出てくるものが、たびたび韓国のダイナミックさを作っているからです。夏休みとか、誰でも、釜山のあちこちに来たいと思う。まるで、私たちが福岡、長崎、北海道とかいろんなところに行きたいように。大体の韓国人たちは、釜山に来られる。
釜山は今変わっています。だんだん変わってきています。なぜかというと、ソウルあたりは、(人口が)約1000万人。今、釜山は、330万人以上。でも、仁川が、釜山を超えたんですよ。だから、人口はソウル、仁川、釜山の順になっている。ですけど、今は、ダイナミックなように、2030年に釜山で万博も希望している。だからその結論としては、釜山は、マグマだ。韓国の、文化とか、人物のいろんなものが出ていく、マグマだ。
もう一つ、私が目指すのは、日本と韓国は、経済的な境界はだんだん一つのように結ばれるかもしれない。ソウルよりも釜山がもっと近い。できるかどうかわからないのですけど、釜山と福岡とかを結ぶ、船とか飛行機じゃなくて、トンネルとか繋がったら一つのバウンダリーの中で、もっと強くなります。私は、それを希望しています。
お二方からは、日本と韓国の関係にかける思いを伺うことができました。これからも活動の輪が広がることを願います。取材に対応してくださりありがとうございました!
記事執筆:蟹江