台湾大学附属病院 実習体験記 その1

生活と社会を知る

こんにちは。私は医学部6年生の時期に台北市内にある台湾大学附属病院で病院実習をする機会を得たので、実習の様子や台北生活などについて簡単に紹介をしていきたいと思います。簡単に紹介するつもりでしたが意外と文章が長くなってしまったので、今回は第一弾として、「参加の動機」「台湾大学附属病院の紹介(軽め)」「救急科の実習」の3つについて紹介します。

 

〇参加の動機

 私の所属する医学部では6年生のときに自由選択期間があり、海外でも国内でも受け入れ先の許可さえあれば好きなところで実習ができます。特に台湾大学を含むいくつかの国外の大学の医学部とは協定関係にあったので、学内で面接等の選抜を通過した学生が毎年海外の病院に派遣されて実習をしていました。協定関係にある大学としては台湾大学の他にもアメリカやヨーロッパ、シンガポールの大学がありましたし、国内の他地域の病院で実習をすることももちろん可能ですが、私はほぼ迷わず台湾大学を選びました。主な理由として、台北は何度か足を運んでいるので安心感がありましたし、頑張れば一応は病院実習ができる程度の中国語力があったので、台湾大学附属病院ならば充実した実習ができるだろうという確信があったからです。(費用や手続きなど、いくつかの副次的な理由も勿論ありました)

 

〇台湾大学附属病院の紹介

 台北駅の近くにあるベッド数が2000を超えるとても大きな病院です。1895年に創立された病院で、杜聡明のような有名なお医者さんを多数輩出しています(彼についてのブログ記事もいつか書きたいですね)。大学病院と言うと難しい症例ばかりを治療しているイメージがあるかもしれませんが、台湾大学の附属病院は比較的軽い疾患から重い疾患まで幅広く治療をしていて、患者さんの数もとても多いです。また、台湾大学医学部の学生が実習をしているのはもちろんですが、毎年多くの留学生がやって来て、短期の病院実習を行っています。

 

〇救急科の実習

 私は台湾大学附属病院のいくつかの診療科で実習をしましたが、今回は最初の2週間に実習をした救急科を紹介します。内容としては、現地の5年生や6年生向けの講義への参加、問診や治療の見学・お手伝いなどでした。
講義は救急に関する導入講義、中毒に関するケーススタディー、心電図の読み方、救急の症例の検討、小児救急と大人の救急の違い、包帯の巻き方の練習、人工呼吸の練習のような臨床医学に関するものから、災害医療に関する講義やシミュレーションなど内容が豊富でした。学生を指名するタイプの先生だった場合には留学生もしばしば回答が求められたので、緊張感がありました。ただ、外国人の自分がきちんと内容を理解できているかは常に気にかけてくれて、わからない点は質問をすると丁寧に答えてくれました。臨床方面の講義は日本で聞いたことがあるものを中国語で聞くという感覚でした。一方、災害医療の講義は日本と台湾の医療職種の種類や役割の違いなど、文化の違いに気づくことができて非常に興味深かったです。ざっくり言うと、日本では医者や看護師の数が多い代わりに彼らの負担が重いですが、台湾では他の職種の方がたくさんいるので、相対的に医者や看護師が少なくても大丈夫という印象がありました。
講義のない日は、患者さんの問診や治療の見学、処置のお手伝いなどを行いました。台湾大の救急はまずトリアージの場所があり、そこで患者さんは救急の内科、救急の外科、救急の小児科、重症者部門に分けられます。留学生はこれらの場所を毎日かわるがわる渡り歩いて見学・実習を行いました。現地の学生は12時間のシフトに週何回か入る形式で、留学生は毎朝来る代わりに午後5時以降は好きな時間に帰って大丈夫でしたが、ホテルで休むより実習をしていた方が楽しかったので私も午後7時、午後8時ごろまで病院にいることがしばしばでした。部門ごとに多少の違いはありましたが、だいたいは患者さんが来る毎に問診や処置を見学して、学生でもできる処置を適宜手伝うという内容で、空き時間は症例に関する説明を聞く、あるいは雑談をするという形式でした。風邪、転倒による外傷、料理の最中に指を深く切る、心肺停止、意識喪失など、ごく軽いものから救命の難しいものまで症例は多様で、とても密度の濃い実習でした。
さて、救急科の特殊な点は、中国語の話せる留学生のみ選択可能である点です。他の診療科は留学生が英語を使って実習をすることを主に想定しているのに対し、救急科は中国語で実習をすることが前提になります。なので、留学生のための特別な実習があるわけではなく、基本的に現地の学生さんと同じスケジュールの実習をするという形式でした。このような形式だったので、救急の実習期間中は、医学のことも医学には関係のないことも含めて、現地の学生達とたくさん話をすることができました。また、中には休みの日に勉学が忙しい中で台北観光に付き合ってくれる優しい学生さんもいました。実習の最初の2週間が救急科であったことは、医学方面の中国語に慣れるという意味でも現地で友達を作るという意味でも非常にありがたいことでした。現地の学生さんたちには非常に感謝しています。

 

今回はここまでにします。いずれ「その2」を出す予定です。

 

妙手回春