A.Y中国留学体験記

生活と社会を知る

1.留学に至った経緯

初めは第二外国語で中国語を学び、二年生の夏に北京サマーセミナーに参加しました。一か月間、清華大学で勉強し中国で過ごすうちに、中国語の面白さとエネルギッシュな雰囲気に魅了され、長期留学もしたいと考えるようになりました。そこで中国政府奨学金の募集がかかった際にすぐに応募したところ、運よく採用されたのです。中国政府奨学金は返済不要で学費・ 寮費・生活費が支給され金銭的負担がないため、留学の決め手となりました。
このように恵まれた条件と多くの方々のお力添えを頂き、3 年生の後期から休学し、北京大学に留学しました。また今回は、新型コロナウイルスの影響により当初約 1 年を予定していた留学は5か月で終了となってしまいました。 

2.留学先での生活と学習の環境

 私は北京大学の対外漢語学院という中国語や中国の文化を学ぶ学校に在籍しました。クラスメイトはアメリカ、オーストラリア、イラン、北朝鮮、ドイツ、スペイン、デンマークなど様々な国からの留学生で構成されており日本人は私一人でした。
中国語の授業を通して一人一人の自国に対する考えや、価値観を垣間見ることができて毎日が刺激的でした。彼らは授業中、我先にというように発言していました。私は日本では授業中ほとんど発言していなかったため少々ひるみましたが、彼らの学ぶ意欲に感化され、積極的に授業に参加するようになりました。

留学が始まったばかりの頃は、簡単なコミュニケーションもうまくいかず、何度もくじけそうになりました。 しかし、先生方や他の留学生に励まされ、間違いを恐れずにどんどん会話しようという姿勢に切り替えてからは上達が早かったと感じています。
平日は放課後、図書館や寮に併設されているカフェで勉強をし、ランゲージパートナーと会話の練習をして過ごしました。北京大学の学生は、テスト前でもない普段から図書館で机に大量の本を積み上げ、朝から晩まで黙々と勉強をしていたので、私も頑張らなければという気持ちにさせてくれました。休日は友人と街へ遊びに行き、屋台で会話の実践をしたり、万里の長城や中国歴史博物館に行き歴史の理解を深めました。また、日常生活を通して中国の現状や発達したデリバリーサービスやキャッシュレス決済、流通システムなどを体験することができました。寮の部屋は二人部屋で、ハンガリー人のルームメイトと暮らしていました。彼女はとても穏やかでユーモアがある人でした。私たちは出会ってすぐに二人で西安に兵馬俑を見に行ったり、河南省に旅行に行ったりしました。夜は英語と中国語でおしゃべりをしたり散歩に出かけたりして楽しい時間を過ごせました。 

 

3.留学を勧める理由

 メンタルが強くなります。留学して間もない頃はどこへ行っても不安で、わからないことを一つ解決するにも一苦労でした。学校の食堂でも注文が聞き取られず、調理のおばさんに「こんな発音じゃ通じないよ!」と注意されたこともあり、心が折れ、このまま餓死してしまうかもしれないと本気で考えていました。しかし数日たつと、ここでは自分を出すのを恥ずかしがって黙っていたら、人に埋もれてしまうと気づきました。そこで周囲の中国人を見渡し、なるべく同じようにふるまうように心掛けました。
そうしていくうちに、わからないことがあればすぐに知らない人に聞き、多少の困難では動揺せず対処できるようになりました。北京での生活も2か月を過ぎると大分慣れ、大学内の空手部に入って週三回の練習に参加したり、学生交流会に参加して積極的に中国人や他の国籍の学生と交流するようにしました。留学を通して以前の私とは比べ物にならないほど度胸がついたと感じています。

 

4.印象に残ったエピソード

2020年1月中旬、雲南省、四川省、重慶に一人旅に出ました。留学でどのくらい中国語力と度胸がついたか試してみたかったからです。当初はコロナがじわじわと広がり始めていたくらいでまだ大丈夫だろうと高をくくっていました。しかし、日がたつにつれ猛威を振るい始め、旅先の観光地もすべて閉鎖されました。空港や駅、街も防護服の人たちが現れ始めとても混乱していました。ある日、とうとう雲南省の麗江で泊まっていた青年宿舎から「今日で閉鎖するので、全員今日中に出ていくように」と通達がありました。
たくさんの中国人の方が次の宿泊先や移動手段も決まっていない中、日本人である私の心配をしてくれ、率先して飛行機の変更やキャンセルの電話、そして空港は遠いからと車を借りて送ってくれました。旅中でも、出会ってまもない現地の方が、せっかく来てくれたのに観光地も全て閉鎖され申し訳ないからと、かろうじて開いている場所を案内してくださったりご飯をごちそうしてくれたりと、多くの中国人の方が心を尽くしてくださいました。私はこの出来事に関して本当に感動し、私も自分がピンチの時でもほかの人に目を向けて手を差し伸べられる人になろうと決めました。

5.留学して学んだこと

  私がこの留学を通して最も学んだことは、やりたいことは後回しにしないということです。当初約1年間あると思っていた留学がまさか5か月で終わってしまうとは夢にも思っていませんでした。5か月で終わると初めから分かっていたならもっと挑戦していただろうと思うことが山ほどありました。皆さんは留学に行ったら後悔のないよう、現地でしかできないことをし、いろんな人と話し、いろんな場所に行き、いろんなものを食べてみることをおすすめします。留学が中断して非常に残念でしたが、現地の混乱ぶりを目の当たりにし、様々な情報が飛び交い、どれが正しい情報なのかわからずに疲弊しながらほかの留学生と情報交換をし、自分で中止という判断を下したことなどの、この一連の経験は何にも代えられないと思いました。この留学は私の人生の中で最も濃密で衝撃的で楽しい時間でした。
留学は思いがけないことも起こりますが、行って後悔することはないと思うので、少しでも行きたいのならまず大学の留学センターに行き相談してみることをおすすめします。応援してくださった先生方、手厚いサポートをしてくださった留学センターの皆様、中華人民共和国駐新潟総領事館の方々、遠くから励ましてくれた家族、友人に心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

2020年元旦に行った河北省秦皇島市山海関(万里の長城の最東端)

 

四川省で食べた麻婆豆腐

茶話日和