この記事は「日中交流の最先端!『日中未来創発ワークショップin東京』に突撃取材!!」の続編です。
前編はこちらからご覧ください。
この記事では2月18、19日に公益財団法人笹川平和財団様主催のもと開催された「日中未来創発ワークショップin東京」でメンバーとして一緒に楽しく活動した参加学生の劉さんと宮本さんのインタビューを掲載させていただきます。
劉詩穎(リュウ シエイ)さん。中国湖北省出身。日本語学科で日本語を学んでいて、日本のアニメ、音楽、文化に興味がある。今回が初来日。
午後のフィールドワークでまず行ったのは「虎ノ門金刀比羅宮」という神社である。日本人学生に参拝方法を教わりながら彼女もお参りをした。実はこの神社、ビルとビルの間の土地におかれているのだが、この空間が彼女のお気に入りなようだ。「都市という忙しい空間の中でこのような静かで落ち着く土地があるのは日本だけ。中国の都市にこのような空間はあまりないから日本ならではの良さを感じる」と話してくれた。4月に上京し、都会の喧騒な部分にのみ目がいっていた筆者にとってもなるほど!と思わせられる気づきである。
続いて虎ノ門ヒルズ、麻布台ヒルズ、六本木ヒルズのヒルズ系を制覇した。移動中、彼女はたくさんのことを話してくれた。ビルのデザインが先進的で、自然と融合していること。ビルから伸びている広告の看板がカラフルで、モニターを使った最新式の広告の中に交じっているアナログの看板が日本ならではの雰囲気を醸し出していること。日本にいるのに歩いているとたくさんの外国語が聞こえてきて東京は香港のように国際色豊かに感じられたこと。これら全てが彼女にとって新鮮だったようだ。「実際に東京の雑踏の中に身を置き、街を歩いて高層ビル、ネオン、賑やかな人ごみ、そして周囲から聞こえてくるさまざまな言語の話し声に耳を傾けていると、まるでアニメのワンシーンの中にいるようだった。現実の東京がアニメの世界と似ていながら、でも、実際に行ってみるとアニメの中とはまた違う独自の魅力を持っていることに驚いた」と感想を述べてくれた。
この後は、喫茶店でプリンを食べて東京駅へ移動、ホテルのある池袋で夕食を食べた。「座・麻婆唐府 池袋店」にお邪魔し、四川料理を食べた。グループの中国人学生からは本場と同じ味がしておいしい、と高評価であったがなにせ四川料理だから辛かった。日本人学生がヒーヒー言いながら食べる中、中国の学生たちは「全然辛くないよ」と笑いながら食べていて食文化の違いを痛感させられる瞬間でもあった。
本来フィールドワークはここで終わりなのだが、タワーレコードに用事があるということでついて行った。インターネットを通じて知り合った中国語を学んでいる日本の友人と待ち合わせをしていた。友人はなんと福岡県から会いにきてくれたそうだ。音楽に興味がある彼女は友人と一緒にCDやレコードを選んでいた。悩んだ末に購入したのは「キノコ帝国」・「ゆらゆら帝国」・中森明菜の「クリムゾン」の3枚である。音楽・芸術が好きなそんな彼女の将来の夢は演出、ライブハウス関連の仕事に就くこと。音楽や芸術の力を借りて日中両国の架け橋になりたいと言っていた。
2日間のワークショップを通して最後に彼女はこのように感想を述べてくれた。
「中国で育ちながら、日本のアニメ、音楽、文化に深く感化された私にとって、東京に足を踏み入れることは間違いなく夢のような瞬間だったし、優秀な日本人の友人もできた。私たちはどこの国であろうと、みんな同じ人間であることに変わりはなくて誠実な心さえあれば、みんな仲良くなれると思う。東京で過ごした2日間で、新しい環境に適応し、異文化の人々とのコミュニケーションを学んだことは、人生における貴重な財産である。 たくさんの思い出と感情を胸にこの街を去ることになるが、その素晴らしい瞬間と感情は永遠に私の心に残ると思う。」
彼女にとっても筆者にとっても充実した2日間であった。
(冒頭の写真はお気に入りのCDを手にタワーレコードで撮影)
宮本薫子 (みやもと ゆきこ)さん。国際教養学部で中国語を学習していて、脳科学やグローバルヘルスに関心がある。今回が日中交流型のワークショップの初参加。
午後のフィールドワークをして歩きながら、彼女が中国語を学ぶことになったきっかけや日中韓の文化など様々な話ができた。まず、彼女が今回このワークショップに参加することになったのは、在学している大学の中国語の先生からのお知らせで知ったようで「実は今回が日中交流系のイベントに参加するのが初めてだった」と語った。彼女が積極的に中国の学生と中国語を用いて、交流をしていたことから、今までも今回のワークショップのような日中交流のイベントに何度も参加してきたのではないかと筆者は思っていたが意外に感じた。
加えて、中国や中国語に興味をきっかけは「高校では、元々韓国語を学習していたが飽きてしまい、中国も日本や韓国とおなじように漢字文化圏で類似した文化などを共有していることから、興味を持ち学習を始めた」と話しており、「特に中国に関しては市場の速さに興味がある」とも述べてくれた。筆者も韓国語を中学時代から学習し、現在も大学で履修していて、最近は日中韓の文化の類似点や相違点について関心を持っているので、彼女のきっかけにはとても共感できた。
フィールドワークから夕食に向かうために池袋に向かってる間に、ふたりとも韓国語を学んでいたということから、韓国語で会話する機会があった。その会話の中で彼女は、言語によって若干自分の性格が変わると言っていて「英語を話している時が一番外向的で、韓国語と中国語がおなじくらいの外向性があって、母語である日本語が外向性が低くなる」と話してくれた。このことは筆者も実際に英語や韓国語などの外国語を話す中で同様に感じていたことだったので、より親近感を覚えた。
夕食をしている間には日中韓の料理の傾向として、中国と韓国の料理は比較的日本に比べて大皿で提供されることが多く、日本は一人一人に分けられているものが多いという話もでき、日本と中国の話も勿論できたが、それだけでなく、韓国も含んだ東アジアの文化の話ができたのも筆者はすごく楽しめた。
2日間のワークショップを通して最後に以下のように感想を述べてくれた。
「普段から仲良くしている中国の友人と同様、中国の学生は日本のアニメや漫画を通して日本語を勉強する人が多く、日本人である私が逆に学ばされるほど日本の文化に詳しかった。一生懸命知っている日本語を話し、中国語と日本語が混合しながらも積極的にコミュニケーションを取ることに努めていた。その姿を見て私は、いかに自分が言語の壁を超えることができずにいるかを実感した。母国語に他の言語が混ざることを恐れ、今まで完全な自分を抑え込んでいた。そういった点において、このワークショップのグループメンバーからは勇気をもらったと共に、より未来の実現に一歩踏み出してみようという気持ちが芽生えた。」
彼女や筆者にとって、まるでそれが私たちの日常かのように韓国語で会話ができたのは、今回のワークショップで起こりえると考えていなかったことであるし、日本人学生の間でも外国語を使って会話できて、とても楽しめた。加えて筆者は彼女の当たり前のように中国語を用いて積極的に中国人学生と交流していた姿に大変感銘を受け、筆者にとっても、彼女にとっても充実した時間となった。
(冒頭の写真は今回のフィールドワークで初めて訪れることになった麻布台ヒルズの展望室にて撮影)
フィールドワークを終えて
初日のフィールドワークを通じて得た気づきをもとに10年後の未来について発表した。フィールドワークやディスカッションで中国の学生からは「日本は街にゴミが少なくてきれい」「ゴミ箱もゴミの種類別に用意されていて素晴らしいと感じた」「中国では街にゴミが多くて、分別もされていない」という意見が上がったので、10年後は日本の分別・リサイクル文化を中国に浸透させることができればいいね!という方針で発表の準備をした。その際、バーコードをスキャンせずに商品を識別できるユニクロの商品タグから着想を得て、ペットボトルやアルミ缶、スチール缶に小さな識別シールを貼り付けてゴミ箱に捨てた際に機械が自動でタグから素材の情報を読み取って分別をしてくれる仕組みがいいのではないかという結論に辿り着いた。もちろん、これを社会全体で実践するのには時間もお金もかかるのでまずは会社のオフィスなど、同じ建物の中の小さなフィールドで実現しようというまとめをして私たちのグループは発表を終えた。
二日間一緒に活動したメンバー
取材・文責:平柳智明、多田太良
取材協力:笹川日中友好基金様、劉さん、宮本さん
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