2024年11月24日から26日の3日間、その名の示す通り東京大学駒場キャンパスで開かれた駒場祭。普段は学生や教員などの勉強、通行、団欒の場であるキャンパスに、毎年3日限りで巨大なマーケットが立ち現れます。
東アジアをターゲットとするメディアである茶話日和は、直近年間は出店者として、葱油餅や蒸餃などの中国料理を提供してきました。ですが毎年駒場祭には他にも、世界中さまざまな地域に関する出店があります。どのような人たちがどのような考えや動機から、どのような出店を行っているのだろうか。という関心の下、2024年度の駒場祭では、3日間計8つの出店に、飛び込みでお話をうかがってみることにしました。とりわけ「国際性」、を持つと思われる出店に絞りました。
今回前編では、24日金曜日に取材した4つの出店(コックさんの本気ピッツァ、アフリカ料理屋 CousCous de Bœuf、アジアンキッチン、Chunky Funky Pumpkin)を掲載します。掲載の順番は取材順です。紹介していく際に出店の場所を記していますが、大まかには以下の地図から確認できます。
駒場祭キャンパスマップ(駒場祭公式ウェブサイトより)
①東京大学イタリアン研究会「コックさんの本気ピッツァ」
- 場所:第1体育館裏A10
- メニュー:ピッツァ(1000円)
- 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「特別な本格窯を使って焼き上げた、できたて熱々の本格ナポリピッツァを販売します。レシピを統括するのは、調理師免許を持ち、イタリアンレストランでの勤務経験もある一流の料理人。試作を重ねた末にたどり着いたそのピッツァは、文化祭のレベルとは思えないクオリティに仕上がっています。前回の駒場祭ではSale部門1位を獲得。ぜひご賞味あれ。食べれば、分かる。
お話をうかがったのは、こちらのシェフである濱田啓佑さんです。
——この出店はいつからやっているんですか。
濱田 去年の駒場祭からです。今年の五月祭と、今回で3回目になります。
——もうすでにちょっと有名ですよね。毎回けっこう売れているんですか。
濱田 知る人ぞ知るみたいな感じですけど。昨年度は駒場祭グランプリをいただいて、五月祭は2日間で400食を完売できました。あ、ありがとうございます。
ラスト1枚だったところ、お客さんが来てちょうど完売したようです。
——マルゲリータですよね。3日とも同じ数を売るんですか。
濱田 いや金曜はさすがに少なくしてます。去年3日間とも120食準備したら金曜は売れなかったので。今日は70食ですね。鬼門の金曜日で完売できたのはでかいですね。
——こちらはどういう人たちでやっているんですか。
濱田 目白台にある和敬塾という、いろんな学校の人が集まっている学生寮の人でやっています。僕は早稲田の文学部の2年生なのですが、和敬塾のメンバーで東大の学園祭に出ようということになって、僕がイタリアンで働いていてピザを焼いていたので、ピザをやりたいと言ってはじまりました。
——そうなんですね。
濱田 はい。高校でずっと料理を勉強していて、札幌のテルツィーナという店で3年間働いていたんです。最初は皿洗いからやって、で次にドルチェ、デザートをやって、前菜をやって、というような段階があるんですけど、僕はタイミングが良かったので、ピッツァ担当まで行くことができて、ピッツァをずっと作っていました。
——上り詰めていく感じなんですね。
濱田 そういうシステムでしたね。で辞めてから一年勉強して、大学に入ったという感じです。
——この釜2つはみんなで買ったのですか。
濱田 そうですね。1つ6万で12万でした。
——大学生の中ではかなり特殊な技能なのではないですか。
濱田 だいぶ特殊ですね。あんまり聞かないです。生かして頑張りたいと思います。
——どうもありがとうございました。
奥にみえる黒いもの2つが釜である
②MPJ Youth「アフリカ料理屋 CousCous de Bœuf」
- 公式サイト:https://www.mpjyouth-official.com/
- 場所:博物館北A館
- メニュー:クスクス料理(500円)、グアバジュース(300円)
- 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「北アフリカ発祥、世界各地で食べられているクスクスを使った料理と、グアバジュースを出します!複数のスパイスを使用しており、本格的な味わいになっています!普段日本で生活している人にとってはアフリカ料理はあまり身近な存在ではないのではないでしょうか?ぜひお越しください~!」
お話をお聞きした田中成美さん
——今回はMPJ Youthのサークルとして出されているんですよね。
田中 そうですね。去年もモロッコのタジン鍋というのを出して、アフリカ地域についてのサークルなので、今年もアフリカの料理を出そうというコンセプトでクスクスを出すことにしました。
——クスクスは細かくはどこの地域の料理なのですか。
田中 クスクスはフランスとかイタリアとか、北アフリカでよく食べられています。アフリカだけというわけではないのですが、穀物で主食になるようなものを選びました。
——昨年と引き続き北アフリカのものを出しているのには理由があるのですか。
田中 いやたまたまですね。ただ西アフリカだと辛い料理が多いということがあって。手に入れやすくて、駒場祭で提供しやすいもの、と考えた結果、2年連続北アフリカのものを出すことになりました。
——そうだったんですね。駒場祭や五月祭の出店は毎年行っているのです。
田中 1年に1度行くアフリカ研修の成果報告会みたいなものを、毎年五月祭で出しています。駒場祭では去年、たぶん7年ぶりぐらいに飲食の店を出しました。なので比較的久しぶりというか新しいというかというか。今日は金曜日なのでお客さんの数はまあまあですが、土日もう少し増えるといいなという感じです。
——今回のクスクスなんですけど、コリアンダーの香りがけっこうしました。
田中 スパイスはクミン、コリアンダー、カイエン、パプリカですね。トマト、玉ねぎ、ガーリック入りマーガリン、あとイスラーム圏なので牛肉、あと先ほどのスパイス4種とローリエが入っています。
左がクスクス、右がグアバジュース
——みなさんで集まって練習したりしたのですか。レシピを決めたりとか。
田中 試作会を夏頃に2回やり、最終的な味やスパイスの量は、団体の代表が自分の家で作って決めてくれました。何を出すかなど、毎年同じもので決まっている団体もあると思うんですけど、うちはそうではないので、そういうところからみんなで相談しながら決めました。
——シフトにも人数はけっこう入っていますか。
田中 MPJ Youthには東京外国語大学の学生が多いんですが、駒場祭が外語祭と重なってしまっているんです。なので20人ぐらいが入れ替わり立ち替わり入っています。
——外語祭たしか長いんですよね。
そうですね5日間なので。外語祭では今年はマフェとウガリを出しています。
——というのは。
田中 マフェはピーナッツを使ったカレーみたいな感じのものなんですけど、それをトウモロコシの粉を捏ねて作ったウガリというもので食べます。ウガリはおもちみたいな見た目で、東アフリカのものです。
——外語祭と駒場祭、どちらも頑張ってください。ありがとうございました。
③NPO法人MIS「アジアンキッチン」
- 公式サイト:http://misleaders.stars.ne.jp/
- メニュー:トムヤムクン(400円)、マンゴージュース(100円)
- 場所:13号館東8
- 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「ココナッツミルクとスパイス香る本場のトムヤムクンを提供します!あと、マンゴージュースも美味しいです。」
——昨年の駒場祭は何か麺の料理を出されてましたよね。
インドネシアのミーゴレンを出していました。東南アジアの団体なので、東南アジア料理を出そうということでやっています。
——東南アジア研修のようなものもあるのですか。
渡航という名前で、現地に年2回、春と夏に行っています。
——東南アジアのどのようなところの活動をしているのですか。
ミャンマー、タイ、ベトナムとインドネシア、あとフィリピンです。4つのチームに分かれて活動しています。私が所属しているタイ・ミャンマー国境チームは、タイのメーソートという場所で活動していて、避難民の教育格差について扱っています。
——幅広い地域に跨って活動しているのですね。今回のトムヤムクンはタイのものだと思いますが、中には何が入っているのですか。
中身はタマネギ、エビ、トマト、マッシュルームですね。試食会をやって味を決めましたが、試食会にはそこまで多くのメンバーが来たわけではないです。メンバーは全部で70人ぐらいいるのですが、実際活動しているメンバーはそこまで多くありません。
左がマンゴージュース、右がトムヤムクン(すでにけっこう食べた後)
——酸味が効いていておいしいです。今日は金曜日ですが売れ行きはどうですか。
今日ははっきり売れてないですね。3日間、数に傾斜をつけずに準備してしまったので。この場所は人通りはあるんですけど止まってくれないんです。
——明日からの土日でたくさん来ると思うので頑張ってください。ありがとうございました。
④TFT-UT「Chunky Funky Pumpkin」
- 公式サイト:https://jp.tablefor2.org/
- メニュー:蒸しカボチャ(プレーン(200円)、黒蜜くるみ(250円)、焼肉のたれ(250円))
- 場所:矢内原通りC6
- 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「タンザニアのおやつ、蒸しカボチャを販売いたします!様々なトッピングをご用意しておりますので、ぜひお越しください!」
メンバーの平井さんにお話をお聞きしました。
——こちらはどのような団体なのですか。
平井 Table For TwoというNPO法人の東京大学支部で、活動としては大学の学食にメニューを出して、その売り上げの一部を寄付する、ということを行っています。20円分が給食1食分になるというものです。
——メニューを考えて出しているんですね。
平井 はい。ヘルシーメニューを考えていて、今年の春は、春のあんかけラーメンという季節の旬の菜の花などを取り入れた野菜多めのメニューを出しました。
——団体の人数はどれくらいですか。
平井 10人くらいですね。Table For Twoの大学連合というのがあり、その下にいろんな大学のものがあって、そのうちの一つがこの団体になります。Table For Twoではさまざまな大学の学食や企業の食堂にメニューを出しています。この東京支部は10年くらい前に立ち上げようと言った先輩がいてできました。
——駒場祭や五月祭はいつも出しているんですか。
平井 五月祭は出していませんが駒場祭は毎年出しています。出すものは毎回変えていて、昨年はフィリピンのソウルフードのバナナQってのを出しました。
——それはどういうものですか。
平井 揚げバナナなんですが、バナナに砂糖をまぶしてそのまま揚げたものなので、外がカリッとしています。調理用バナナという、日本で一般的に売っている種類じゃないバナナをフィリピンから取り寄せて仕入れて作りました。
——今年の蒸しカボチャはどのようなものなのですか。
平井 タンザニアで食べられるおやつです。タンザニアではカボチャを丸ごと蒸し焼きにして、それを投げて割って食べるのですが、今回はそれはできないので、小さく切ったものを蒸籠で蒸して出しています。
——フィリピンとタンザニアというのは何か縁があったのですか。
平井 Table for Twoの支援先が東南アジアとアフリカの発展途上国で、その支援先の国で食べられてるものからいつも選んで出しています。現地での活動はTable For twoの団体自体がやっているので、うちはメニューを出したりとかをしています。
——焼肉のたれっていうのもあるんですね。
平井 焼肉のたれは、焼肉やバーベキューでカボチャ焼くじゃないですか。そんな感じです。黒蜜くるみもあります。ぜひ食べてみてください。
——明日はそちらも食べてみます。ありがとうございました。
これは黒蜜くるみのトッピングのもの
駆け足で4つの出店のものをお届けしました。駒場祭では非常に多くの出店があり、さらに人混みも激しいことから、多くの人にとってほとんどの出店はただ通り過ぎていくだけのものでしょう。ですがこうして店の前で食べながら、出店者に話をきいてみると、そこには多くの具体的な話があります。寮での出店もあればサークルでの出店もあり、当日に至るまでの背後にある事情も異なります。今回の4つはいずれも「外国」料理を出すものでしたが、それぞれのその地域とのかかわりを垣間見ることもできました。取材前後で食べ物の味も変わるような気がしました。
4つの出店の方々ありがとうございました。また取材後公開まで大変お時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。次は中編に続きます。
(文責:石塚大智)