駒場祭で出店者に話を聞いてみた(後編)

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前編はこちら

 2024年11月24日から26日の3日間、その名の示す通り東京大学駒場キャンパスで開かれた駒場祭。普段は学生や教員などの勉強、通行、団欒の場であるキャンパスに、毎年3日限りで巨大なマーケットが立ち現れます。

 東アジアをターゲットとするメディアである茶話日和は、直近2年間は出店者として、葱油餅や蒸餃などの中国料理を提供してきました。ですが毎年駒場祭には他にも、世界中さまざまな地域に関する出店があります。どのような人たちがどのような考えや動機から、どのような出店を行っているのだろうか。という関心の下、2024年度の駒場祭では、3日間計7つの出店に、飛び込みでお話をうかがってみることにしました。とりわけ「国際性」、を持つと思われる出店に絞りました。実際、非常に空間的、時間的に限られたものである駒場祭という場には、驚くべきほど地理的にさまざまな地域のものが集まっています。

 後編では、25日土曜日と26日に取材した3つの出店(東大語学愛好会、東大スパイスマルシェ、Peak’s Kitchen)を掲載します。掲載の順番は取材順です。紹介していく際に出店の場所を記していますが、大まかには以下の地図から確認できます。

駒場祭キャンパスマップ(駒場祭公式ウェブサイトより)

○語学愛好会「東大語学愛好会」

  • ウェブサイト:https://ut-gogaku.org/
  • 場所:11号館1階1102教室
  • メニュー:語学愛好会小冊子(駒場祭2024号(300円)、五月祭2024号(300円)、駒場祭2023号(300円))、言語解読問題集(問題Ⅰ(無印)(400円)、問題Ⅱ)
  • 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「今回は以下の2種類の冊子を販売します!

[語学愛好会小冊子]

メンバーが語学・言語学について書いた記事をまとめた冊子の新刊を今回も出します!各々違ったテーマや切り口があり、非常に面白いものとなっています。また、既刊として2024五月祭号も販売します!

[言語解読問題集]

語学愛好会が作成してきた言語解読の問題を集めた冊子です!挑みやすいカジュアルものからマニア向けの手強いものまで、多くの人に楽しんでもらえるものにしました。」

 1つの教室の中にいくつかの団体が出店していて、語学愛好会はその一角にありました。今回は主に代表の箭内志路さんにお話をうかがいました。

——語学愛好会にはどのようなメンバーが集めっているのですか。語学好きがたまたま集まったという感じですか。

箭内 そうですね。国際交流という目的でもなく、特定の学科中心というわけでもないです。

——東大以外のメンバーもいますか。

箭内 外大の方もいれば、獨協、聖心女子の人などもいます。が、東大の人がかなり多いですね。

——定期的な活動としてはどのようなことを行っていますか。

箭内 定例会は月1でやっています。基本は勉強会単位で活動していて、各勉強会は週1だったり隔週だったりでやっています。読むテクストを決めて勉強会を開くなどしていて、あまり勉強したことのない言語でもいきなり小説を読むゼミには入るなどします。実際私もドイツ語分からない状態でドイツ語読むゼミを立てたりしていたので。

——立てる側だったんですね。出来る人が教えたりするのですか。

箭内 でもそのときはドイツ語の分かる人は1人しかいなかったんで、みんなで四苦八苦しながらやってました。

——みなさんどのような言語に関心があるのですか。

箭内 ぼくはフィンランド語とジョージア語がすごい好きで、フィンランド語が特に好きですね。ただこのサークルでやってるのはフランス語とかあとスペイン語とか。フィンランド語は人が集まらないので。

A ドイツ語を6年くらい勉強してます。

B 私は韓国からの留学生なんで、韓国語とかあと中国語をやったり、他にはサークルで扱う幅広い言語をちょっとずつみてる感じです。

——なるほど。本当にさまざまですね。どのような媒体で学ばれるのですか。

箭内 人それぞれですかね。どうでしょう。オーソドックスに本で読む人が多いとは思いますけども。教科書とか。あと難しいものもみんなで読むと捗りますし。

——団体はいつ頃できたのですか。

箭内 最初にできたのは2018年でけっこう最近なんですけど、そこからコロナがあって1回ほとんど動かなくなって。この代からちょっと復活して、それが去年ぐらいです。でそこから規模が大きくなって、もともと連絡のグループに入っているメンバーは100人ぐらいだったんですが、今は250人ぐらいになっています。

——かなり多くいらっしゃいますね。執行代は何年生なんですか。

箭内 決まっていなくて、今私が代表で、物理学科のB3なんですが、前の代表は今D3です。けっこう小さな組織というか、活動はゼミ単位、勉強会単位ですし、グループにいる人もそれには参加しない人がいっぱいなので、実際に関わる人は少ないですね。

——物理学の興味と語学の興味はつながっているのですか。

箭内 そうですね。大学に入った頃は言語系の中でも神経言語学という、脳科学で言語学にアプローチするという領域がやりたかったのですが、すごく難しい分野なので挫折してしまって、今は目指していないです。結局物理で研究する対象は全然言語ではないんですが、複雑なもののメカニズムを数理的に説明したい、という点では結構モチベが似ているのかなと思います。

——五月祭も出されていますよね。

箭内 はい。学園祭では以前はコミアカという、一つの部屋で、たくさんの団体が冊子を売るというようなところで活動していたんですけど、ぼくの代、2年前の駒場祭からはこういう風に部屋を借りてやっています。みんなで記事を書いて冊子を作って売っていて、あと言語のパズルの問題集もみんなで集まったりして作っています。

——毎回出店されていて気になっていました。本日はありがとうございました。

販売されていた小冊子や問題集。言語の種類はとても多く、箭内さんも知らないものがあるようだ。

○東大スパイス部「東大スパイスマルシェ」

  • ウェブサイト:https://utokyospice.wixsite.com/official
  • 場所:矢内原通りB5
  • メニュー:スパイスキット(赤門カレー(400円)、大根のベジカレー(400円)、南インド風カレー(400円)、東大マサラチャイ(400円))
  • 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「スパイス部オリジナルのスパイスキットを売っています!お家でお手軽に本格的なカレーや赤門カレー、マサラチャイなどが作れます!ぜひお越しください!」

テント内右側がお話をうかがった部長(当時)の稲見北都さん

——スパイスキットの中身やレシピは五月祭や駒場祭のために毎回考えているのですか。

稲見 そうですね。これは五月祭や駒場祭でしか出していないので。

——普段の活動としてはどのようなことをやっているのですか。

稲見 スパイス料理を出すお店に食べに行ったりとか、みんなでスパイス料理を作る会をやったりしてますね。あとは間借りして出店とかも前はやってました。学食とのコラボというのも駒場と本郷でやっています。それは今年度から、生協からお声がけいただいてはじめました。

——だいたい活動のメンバーみたいなのはどれくらいですか。

稲見 食事会とかだったら8人とかもうちょっとぐらい、でも少ない時もありますね。その会ごとに募集して、来たい人が来るっていう感じなんで、人数は4から12ぐらいです。

——たとえばスパイスカレーとインド料理って似て非なるものだったりするじゃないですか。スパイス部の軸足のようなものはどういうところにあるのですか。

稲見 スパイス料理ですね。インドに限らず、韓国だとか、東南アジア、中東、メキシコだとか。スパイス料理全般ですね。「日本をもっとスパイシーに!」がモットーなので。香りや色を楽しむために入れるものをスパイスって呼ぶので、スパイスってどの国でも基本的に使われてるんです。日本だと薬味とかもスパイスですよね。

——メンバーにはどういった関心で入った人がいますか。

稲見 自炊したい人あるいは自炊してる人とか、あとは高校の時にカレー部に入っていたみたいな人もいました。まあなんかおもしろそうと思って入ってくれる人もいますね。韓国料理が好きで、という人もいます。他にも世界中の料理を1食ずつ作っていく人もいます。160ぐらいやったらしいです。

——駒場祭や五月祭も毎回出店されていますか。

稲見 このサークル自体は7年前からあるのですが、そうですね、最近のは毎回出しています。今年の五月祭はスパイスで味付けしたフライドポテトを出しました。去年の五月祭はインドでよく出てくるようなグラブジャムンとかサモサとかと、スパイスキットを売りましたね。

4種のスパイスキット

——いつも売れ行きが良いという印象なんですけれども。

稲見 そうなんですけど、それは調達から包装から全部自分たちでやってて数が作れないからでもあるんです。本当はもっと作ったらもっと売れて良いんですけど、追いつかないんです。

——スパイスは市販で買ったものをグラムを量って入れているんですよね。

稲見 新大久保のジャンナット(THE JANNAT HALAL FOOD)やグリーンナスコ(GREEN NASCO)とか、あの辺りの店から大袋で安く買って来ています。

——3つはもう売り切れで、残るはベジカレーですね。

稲見 肉が入らないとどうしてももう一品サイドメニューが必要になっちゃうんでね。赤門カレーは名前が強いのでいつも一番早く売り切れちゃうんですけど。パプリカとかチリパウダーとかで赤くした、割と王道のチキンカレーなんです。

——なるほど赤門とつくとやはり売れるんですね。本日はどうもありがとうございました。

○The University of Tokyo PEAK「PEAK’s Kitchen」

  • 場所:センターコートA4
  • メニュー:マラサダ(malasadas)(砂糖(original sugar)、チョコレートシロップ(chocolate syrup)、ラズベリーシロップ(rasberry syrup))(550円)
  • 宣伝文(駒場祭公式サイトより):「今年のPEAKの国際グルメはハワイのマラサダ!このハワイの名物スイーツは揚げたてで中はふわふわ。ポルトガル発祥のマラサダをハワイ風にしました。マラサダは通常、様々なあんこを入れて作られますが、かわいいトッピングを盛り付けてPEAKが提供します。シュガー、シナモンシュガー、チョコシロップ、ラズベリーシロップの四つのトッピングがあります!ぜひPEAKキッチンにいらしてください、駒場図書館の前で待っています!」

出店の責任者の一人である小泉祥太郎さん(写真右)

——PEAKの学生が毎回駒場祭などで集まって出店しているのですか。

小泉 はい。PEAKは教養学部の英語プログラム(Programs in English at Komaba)で、駒場祭と五月祭には、PEAKの生徒会が率先して出しています。これまで香港ワッフルやソーセージシズルを出したりしました。PEAKは2012年にはじまったプログラムなのですが、たしか2016年に最初に駒場祭で出店をはじめました。最初にやったのはトルネードチップスでした。これは先輩から聞いた話なのですが、国際的なテーマにしようということで、各国のスパイスを選べるようにして、それをかけて、トルネードを国際的に味わえるようにする、という企画でした。

——PEAKの学生はみんな生徒会に所属しているんですか。

小泉 いや一部で、僕ともう1人が生徒会で。残りはボランティアで、ウェブのフォームを送って集めました。五月祭や駒場祭は、最初にやってからは、コロナ期以外は毎年出しています。

——PEAKの学生はそれぞれみなさんお知り合いなのですか。

小泉 そうですね。1学年30人前後で、それが4学年なので人数はけっこう少ないです。PEAKの学生は9月入学なのですが、入学のとき、2年生が率先して新歓などを行うので、自分の上の学年とも知り合いができます。僕は今は2年生なんですけど、今の1年生とは新歓でけっこう知り合いました。

——みなさんご出身はどちらなんですか。

小泉 けっこうバラバラで。自分は日本人なんですけどニュージーランド育ちで。日本とミャンマーのミックスの人、アメリカ、韓国、バングラデシュなどです。日本のインター出身の人もいますが、留学生が一番多いですね。

——今回のメニューはどのように決めたんですか。

小泉 父親がハワイ出身の人がいまして、彼女が父親と相談して、ハワイ名物のマラサダ(malasadas)を作ったら良いんじゃないかと提案してくれたんです。ポルトガルのお菓子なんですけど、ハワイで人気になって、一応ハワイ名物です。PEAKの学生の多くは目白台にある学生寮に住んでいるのですが、そこのキッチンでテストしました。

マラサダ

——茶話日和にも留学生のメンバーは多いのですが、PEAKの学生は定着しにくい傾向があります。4月入学の人とPEAKの学生との交流があまりできていないのは残念に思っている点ではあります。

小泉 僕たちも悔やまれるところですね。大学側が作るPEAK生とローカルな学生を交流させるイベントがなくて。あとはみんなが自発的にサークルとかに入ったりできれば良いのですが、PEAK生には日本語があまり出来ない人が多いので、自信がない、とかあとは忙しい、などで行かなかったりします。なので4月生と友達が多い人はすごく限られますね。

——まず日本での生活に慣れることが大変だと思うのでそれに加えてサークルもというのは難しいですよね。でもこういう場が良いつながりの機会になっているのではないでしょうか。

小泉 そうですね。サークルの友達とかも来てくれます。こういう場が常時あれば良いんですけど。そもそもPEAKをご存知じゃない方も多いんで、知ってもらえる機会になったかなとは思います。

——ありがとうございました。

 後編では3つの出店を巡りました。それぞれの出店の方々、ありがとうございました。また記事の作成が遅くなりましたこと、改めてお詫び申し上げます。

 さて、駒場祭の取材記事はここまでです。今回は空間的(駒場キャンパス)、時間的(3日間)に非常に限られた場である駒場祭に、さまざまな地理的空間のものが一度に集積している、という観点から取材をはじめました。これを読んだ方にはぜひ、駒場祭や五月祭に一度足を運んでいただき、実際にその様子を体験していただければと思います。今回紹介した出店もまた見られるかもしれません。ぜひお立ち寄りください。

(文責:石塚大智)

石塚大智